反定立の灰になるまで

燃焼や研磨のあとに残る、何か

鉄でも良いこと


 鉄【てつ】鐵、銕。
  羅:Ferrum 英:Iron
  原子番号は26。元素記号はFe。
  金属元素の一つで、遷移元素である。



 銀に引き続いて今回は「鉄」です! こらそこ飽きたとか言わないー!
 元素記号Feは、「鉄」のラテン語“Ferrum”に由来します。日本語では、鈍い黒さから「くろがね(黒鉄、黒い金属)」と呼ばれていたらしいです! ちなみに前回の「銀」は「しろがね」と呼ばれていました。 安価で比較的加工しやすく、入手しやすいので、最も身近で利用価値のある金属元素の1つです。「最も~1つ」構文はちょっと違和感覚えませんか? 産業革命以後は「産業の米」と呼ばれたり「鉄は国家なり」と言われたりして、国力の指標ともなったようです。また、鉄は多くの金属と合金を作ることで知られてます。代表的なものとしてはクロム・ニッケルとの合金のステンレス鋼ですかねえ。加工された鉄は、生活用具や鉄道、自動車、ロボットなど、あらゆる分野に利用されてますよ。機械を見れば、ほとんどが鉄だったりするかも。磁性が強いため、不燃物からの回収が簡単で、再利用率も高いのです。そういえば、小さい頃に砂場に磁石を持って行って砂鉄を集めてたりしたなー。
 鉄って良いことばっかりなのでは!?
 栄養学的には、鉄は人にとって必須で、鉄分を欠くと貧血などを引き起こしてしまいます。私は貧血気味なのですが、鉄分が足りてないのでしょうか。ホウレンソウとかレバーとか食べなきゃいけないのかもしれませんね……。嫌いじゃないからいいですが。鉄分は必要不可欠なのです。ただし、過剰な鉄の摂取は有害です。というか何でも過剰なことはダメですよね。ヒトの体には鉄を排出する効率的なメカニズムがないから、ヒトが吸収できる鉄の量は非常に少ないし、中には、遺伝的に鉄の吸収ができない人もいるのです! 血中の鉄分が一定限度を超えると、消化器官の細胞が破壊されて、最悪の場合は死に至ることもあるみたいです。一日に許容できる鉄分は、大人で45ミリグラム、14歳以下の子供で40ミリグラムまで! 致死量は体重1キログラムあたり60ミリグラムだからね! 大人向けの錠剤には硫酸鉄が含まれているので、それを飲み過ぎた子供が……なんてこともあったり。こわいですね。気を付けないと。
 やはり全部が良い話というのはなかなかありませんよね。ほんとに。
 ところで、鉄と言えばよく聞くのが、「1キログラムの鉄と1キログラムの綿、どちらが重たいか」という問題ですよね。ここで言う「重たい」とはどういうことなのでしょうか。単に質量の大小を比べているのでしょうか。これがしばしば議論の対象となるのは、日本語の曖昧さが鍵を握っているのだと思います。「重いのは綿だ、Ironは認めない」という冗談を投げつけて、ますますわけをわからなくさせてしまった経験があります。真面目な議論の最中にそういうのはよくありませんでしたね! 後悔はしていません。

 閑話休題
 鉄は、西洋占星術錬金術などの神秘主義哲学において、軍神マルスと関連づけられており、火星の象徴となっています。鉄錆がくすんだ血のような色であることに関係しているのかもしれませんね。ファンタジー小説においては、魔法的なものとの相性が悪いとされることがあります。ってじゃあ魔法剣はどうなの、とか真面目に疑問を投げかけてみたり! 鉄は邪悪なものを取り除く力を持つと考えられていた時代もあったみたいです。
 「鉄」の繁字体「鐵」は「金・王・哉」に分解できることから、「鐵は金の王なる哉」と言われていたようです。使用頻度が高いために失われやすいという点から、「鐵」の略字が「鉄」になったらしいです。「鉄」という字は「金を失う」と分解できることから、忌み嫌われるものとして見られる傾向があるので、あえて繁字体の「鐵」を使用する会社や、「金が矢のように入る」という意味で「失」を「矢」として使う会社もあるんですね。

 使われるから失うのであって。使わないなら失わないのであって。それは出会いと別れみたいに。無くなることは必ずしも悪いことではないし、別れも悲しいけど。あの時のあの状態ではもう二度と手に入らなくて。それは当たり前のことで。「あのときああすれば良かった」「しなきゃ良かった」なんて後悔してしまうのは……。どちらにせよなんにせよ、後悔してしまうのがオチで、つまりは、最善の方法があったならそれをすればよかったなんていう至極当然で必然な心残りがあるけども。

 やって後悔するのとやらなくて後悔するのでは、やって後悔する方が良いなんていう台詞をよく聞きますが、そうでないことは往々にして存在します。「後悔する」と「後悔しない」では、誰もが後者を良いとするのでしょう。では、やって後悔しないのとやらなくて後悔しないのでは、どちらが良いのでしょうか。